las barcas別冊
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『las barcas 別冊』では、写真家、現代美術家、小説家、映画監督、批評家など13名の批評、文学、アート作品が掲載されています。
写真作品では、根間智子が存在への根源的な問いを、風景における時間や意識という自己認識から発露し、美的な定型を攪乱させながらそのものを問う風景写真を投げかけ、仲宗根香織が、自ら赴いたさまざまな地で、時間や風景の微かな変化の中に予感の表れを見出す風景写真を提示しています。また、阪田清子は自身のテーマである「地をめぐる回想におけるからコミュニティへ」を志向するうえで求めた、故郷の山を前にした思索を絵画と詩で問いかけ、山城知佳子は「土の人」において土、水、海、人などの織りなす写真の新作10枚と詩を表しています。
そしてlas barcas2でもご参加頂いた鷹野隆大は、2014年3月に沖縄県北部地域の現在を撮影した写真作品8枚を収録。エッセイ『カスババ』も初出収録し、その撮影に同行した沖縄県在住の研究者新城郁夫は、鷹野の同作品および沖縄の風景について思索を重ねています。
今回、映画界の奇才高嶺剛が、2015年完成予定の映画作品『変魚路』より最新映像ショットを寄せ、それに呼応するように新城郁夫は『変魚路』への想いを綴りながら、高嶺剛監督作品『ウンタ マギルー』などの作品に見られるアイデンティファイからの逃避や、高嶺とジョナス・メカスへの親和性などに言及します。
また、岡田由美子は滞在先のキューバ、グアテマラにて出会った芸術家の紹介や表現のあり方、社会・歴史背景などを「亡命」という視点で考察し、ラテンアメリカの居住経験を持つ濱治佳は、パフォーマンスアーティスト琴千姫、映画監督リティ・パニュ、高嶺剛などの作品を論じつつ「鎮魂」の意味へと思考を深めます。
井上間従文は、写真家・仲宗根香織と美術家・根間智子の作品について思索し、仲宗根香織論では仲宗根の作品テーマを光の暈、フモールなどの言葉にて、過去と未来をつなぐ「予感」の意味において思索を重ね、根間智子論では『スデル』『鳥の巣』の作品を紹介しつつ、作品に通底する『存在の「かたち」』にグリッド的空間や境界のゆらぎを見い出し論じています。
親川哲は、権力下にある者同士に自発する暴力のあり方と、自傷の構造から脱する新しい友愛の関係を掌編小説で描いています。
さらに、2014年6月 にICUで行われた『カルチュラル・タイフーン』での、メンバーによる映像作品発表と批評・質疑応答の全過程も紹介。同会場にて聴講参加していた吉田裕と森啓輔は、4人の作家の発表作品への批評と、コミュニティの場としての雑誌ラスバルカスの制作についての考察を寄せています。
別冊特典映像として、映像作家山城知佳子製作のlas barcas作家紹介映像をlas barcas別冊購入者のみご覧いただけます。雑誌に入れてあるポストカードに記載のURLにアクセスして頂き、パスワードを入力すると映像を見ることができます。
<目次>
根間 智子 | 「Paradigm」より |
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親川 哲 | 「櫛」 |
鷹野 隆大 | 北へ/沖縄・写真 カスババ・文 |
新城 郁夫 | 鷹野隆大「北へ/沖縄」に寄せて |
岡田 有美子 | キューバからグアテマラへ-その場所にいながら、亡命者として生きること |
井上 間従文 | 時間の押し花を拡散させること-仲宗根香織の写真における「過去/未来」のイメージ-イメージ論に向けて(1) |
カルチュラル・タイフーン 2014パネルトーク収録 |
雑誌『ラスバルカス』―「世界」と「沖縄」を横断するアートと批評 |
吉田 裕 | 方向感覚を失うことの肯定として -二〇一四年六月二八日カルチュラル・タイフーン報告 |
森 啓輔 | las barcas in カルチュラル・タイフーン二〇一四 |
山城 知佳子 | 土の人 |
新城 郁夫 | 高嶺剛論のためのノート |
高嶺 剛 | 変魚路 |
濱 治佳 | ラテンアメリカの旅の光と影の狭間の夢 |
井上 間従文 | 根間智子、暗い部屋からつながる特異なかたち-イメージ論に向けて(2) |
仲宗根 香織 | 予感の断片 |
阪田 清子 | 制作ノート 或る山についてのメモランダム |
ISBN978-4-908160-01-1
C0072
A4変形判112頁フルカラー
1800円+税